バスドラ用マイク「サブキック」を自作した話

自作スタジオでのドラムレコーディングに使うサブキックをDIYします。簡単なやつ。
この記事最後のおまけでは、「世界一簡単なサブキックの自作方法」もあります。

ネタのようでネタでない、ちょっとネタみたいな話。

サブキックとは

サブキック(subkick)というのはYAMAHAから発売されたバスドラム用マイクの商品名。(既に生産終了)
ですが、有名すぎて今では商品名を通り越し、ほとんど低音専用バスドラムマイクの通称になっています。

低音専用なので単体ではモコモコの音。
バスドラムの音をメインで拾うマイクは別に立てて、それにプラスする目的で立てる「副次的な(=sub)バスドラム(=kick)用」マイクです。

YAMAHAのサブキックの特徴は本物のドラムを使ったインパクトのある見た目に、YAMAHAのスタジオモニタースピーカー「NS-10M」のウーハーを使って音を拾う独自の構造、そしてその独特な構造から生まれる特徴的な音。

サブキックの仕組み

色々省いた超ざっくりな図ですが

PCから音楽を再生する時は→電気信号を音に変換
サブキックの仕組みスピーカー

 

録音する時は→音を電流に変換
サブキックの仕組みスピーカー

もちろん間に入る機材や繋ぐ場所は全然違うものの、
マイクとスピーカーは電流の流れる方向が反対なだけで、構造的には同じということらしい。なるほどわからん。

完成品・音源

まずは完成品から。

音はこちら。(イヤホン推奨)

一部音が割れていますが、この後アッテネーター(マイクのゲインを下げる機材)を間に入れて解決しました。-20dB(サウンドハウスで800円。送料無料

 

ちなみにメインマイクはATM25です

作り方

ウーハーをタムに取り付ける

近所のリサイクルショップでウーハーを買ってきました。990円。爆安。

サブキック材料ウーハー

DENON DSW-S500です。
型番をググると仕様書が出てくるので、使われているスピーカーが8インチであることを確認しました。

分解。楽勝。
自作サブキック材料ウーハースピーカー

繋がっている線も切ってOK。

ウーハーにドラムヘッドを置きます。
自作サブキック材料ウーハー
大体真ん中

取り付け用のビス穴の位置に印をつけます。
自作サブキック材料ヘッド
自作サブキック材料ヘッド2

そのビス穴を対角線で結んで交差する点を中心としてコンパスカッター(100均)で丸く切り抜きます
自作サブキック材料タムヘッド

その穴にウーハーを入れて、ビス穴にネジを入れ、裏からナットで固定。
自作サブキックウーハー取り付け

これでタムにウーハースピーカーの取り付け完了。

配線

配線の主な材料はこの二つ

  • キャノン-オス:NEUTRIK ( ノイトリック ) / NC3MP
  • マイクケーブル:MOGAMI ( モガミ ) / 2534 Black

 

キャノンのオス端子はこういうやつ。
自作サブキック材料マイク端子

別に普通のオスでも全く問題ないけど、見た目がシュッとします。シュッと。

ケーブルを端子に半田付けします。
1番に裸の線(グランド)
2番に青い線
3番に半透明の線を繋ぎました。専門用語あったはず。HotとかColdとか。何も知らんけど。
自作サブキック半田付け

「俺のハンダ付け何点?」とPAの友達に聞いたことがある。彼は笑いながら「60点だね」と言った。

「彼は優しいので本当は20点なのかもしれない。いや1,000点満点での話なのかもしれない」と考え、卑屈な性格と優しい友を持ったな、と思った。
でももしかすると本当は60点満点の可能性もある。
めでたい頭も持っている。

ドリルで10インチタムのシェルに20ミリの穴を開けて
自作サブキック材料タム

キャノンコネクタを上からはめて
自作サブキック材料タム

裏は端材でビスを受けています。
自作サブキック材料裏面

そしてマイクケーブルの反対側にはコレを使います
自作サブキック材料端子
差込型接続端子というらしい。普通にホームセンターに売ってます。

青と半透明の線に取り付けます。
自作サブキック材料マイクケーブル

ウーハーにこうやって差し込みます
自作サブキック配線
つなぐのはどっちがどっちでもとりあえず大丈夫です。

この状態で音を録音してみて波形を見ます

自作サブキック波形1

拡大して、最初に波が振れる方向が上ならOK
自作サブキック波形3

もしこれが最初に下に振れるなら、ケーブルを反転して繋ぎ直せばOKです。
ちなみに裸のグランドはノイズにならなければどうなっててもいいらしい。もちろんよくわからんけど。

タムホルダーブラケットを取り付ける

使っているタムにはタムホルダーを受けるブラケットがありません。
マイクとしてセッティングしやすいようなブラケットを取り付けます。

みんな大好きサウンドハウスでみんな大好きプレイテックのタムホルダーブラケットを購入。
自作サブキックタムホルダーブラケット
480円。相変わらずお狂いになられていらっしゃる価格。

ビス穴の間隔に合わせてタムに穴を開けます。
自作サブキックタムホルダーブラケット2

画像はサウンドハウスからお借りしました。

実際はこんな感じ。
自作サブキックシェル穴2
穴のサイズは5mmとか6mmとかだったような…。

裏面からビスで固定。自作サブキック裏面からビスで固定

無事につきました。
自作サブキックタムホルダーブラケット装着

これでシンバルスタンドなどを使ってセッティングすることができます。
自作サブキック完成
これにて完成。

これより下にはこの作り方に至るまでの実験結果を書いておきます。
「サブキック 自作」「サブキック DIY」などの検索で辿り着く人たちに何かの足しになれば嬉しい。僕がお世話になったように。

自作サブキック試行錯誤の色々

試行錯誤の色々を当時録った音源と一緒に置いておきます。
公開する予定で録ったわけじゃないので条件も揃っておらず、記憶もデータもメモも曖昧なので「ないよりマシ」という程度のログです。
ちなみにバスドラムはGretsch 22”×14”

ウーハースピーカーは何を使うか

前述の通り、本物のサブキックはYAMAHAのモニタースピーカー「NS-10M」のウーハーを使っています。
実際にNS10Mを買ったんですが、やっぱりもったいなくなってそのままスピーカーとして使うことにしました。一周回って普通の使い方。

小さいギターアンプのスピーカー

自作サブキックギターアンプ

Voxのギターアンプ用10インチスピーカー。腰高な音。サブキック用途としては難しい。小口径バスドラに使ってみたい。

SOLOMON MICS ( ソロモンマイク )

友達エンジニアがスタジオに遊びに来てくれたときに持ってきてくれたポピュラーなサブキック系マイク。めちゃ標準って感じ。普通にいい。欲しい。

 

リサイクルショップで買った990円のサブウーハー

サブキック材料ウーハー
型番はDENON DSW-S500 一番安かったけどタムに取り付けた音が一番好みでした。既にEQで整えられた感があって味付けがわかりやすいので叩いてて楽しい。

DIATONE DS-201のウーハー

自作サブキック材料ウーハー
これもなかなか。めちゃくちゃ重い。一番低い周波数まで録れてた。でも別にそんな低音あってもしゃーないかな、と思った。(データなくしました、無念)

そのまま使う or タムに取り付ける

そのまま使うかタムに取り付けるか、主にVoxのスピーカーで試しました。

そのまま使った

自作サブキックウーハー

タムに取り付けた

自作サブキックタムに取り付け

スピーカーが変わったのではと思うほど低音が入っています。(もしかしたら本当に変わってるかも)

ウーハースピーカーの取り付け位置

タムに取り付けるのは決定ですが、今度は「タムのどこに取り付けるか?」という話になるわけで

バスドラから遠いヘッド

自作サブキックヘッド取り付け

 

全然ピンとこない。「本気出せよ!」と心の中の修造が叫ぶ

バスドラに近いヘッド

自作サブキック

普通の位置。普通って大事なんですねとしみじみした。

ウーハースピーカーの裏をどうするか

バスドラに近い面(=表面)にスピーカーを取り付けることが決定したので「裏面どうしよう」ということになりました。

裏にヘッドを張る

自作サブキック裏面ヘッド

心の修造が顔を出す。「本気だせよ」と言いたげな顔でこちらを見ている。よし次(ここまでVOXスピーカー)

裏に吸音材を入れる

※ここからスピーカーがサブウーハーになるので比較にならない

自作サブキック吸音材

自作サブキック吸音材

スピーカーが変わったのでこれまでとは比較になりませんが、何もない時とは特に変わらず。

メッシュヘッド(=何もなし)

自作サブキックメッシュヘッド

普通。結果的に一番。本家サブキックと同じ。やっぱそうなんですね…しみじみ。

ドラムのシェルは何がいいか

本家のサブキックは「バーチ&フィリピンマホガニー 7プライ」のシェルです。
もはや何でも試してみようのコーナーと化しているので持っている10インチいっぱい使って試してみました。

Gretsch catalina メイプル 10インチタム

自作サブキック材料ウーハー
音は普通に良い。重いのでセッティングしにくい。流石にサブキックに使うのはもったいない。

Pearl リズムトラベラースネア 10インチ

自作サブキックリズムトラベラー
型番はRTN-1004SN
音はGretschから特に変化を感じず「マジかよ」となりました。超意外。良い。
しかもGretschより軽くてコンパクトなのでセッティングしやすい。
でも普通にミニスネアとして使いたいので却下。

KAWAI キッズ マーチングドラム10インチ

自作サブキック完成品
結果的にコレを採用。理由は安い、軽い、見た目がかわいい。もったいなくない。

構造上、両面にヘッドを張らなければ使えないのがちょっとめんどくさい。
裏面はメッシュヘッドや、ヘッドを大きくくり抜いたものを使えば解決。
自作サブキック材料ヘッド

結局タイコを変えても音は変わらずでした。
本当は変わってるかもしれんけどわからんレベル。
これを言っちゃぁおしまいですがどうせメインのマイクと混ぜるのよ。

自作サブキックのゲインが高すぎる

上記の作り方をしたサブキックはゲインが高すぎて(=入力信号が大きすぎて)音が歪みやすくなります。
最初の動画でも実際に歪んだ音が入っています。

仕組みは当然よくわかりませんが、実際そうなってるのでしょうがない。対策します。

キャノン→フォンに変換してLINE INに挿す

自作サブキックゲイン大きい問題
キャノンからフォン端子に変換し、ミキサーやインターフェイスのLINE INに差し込みます。
キャノン端子でMICインするより-10dBされるので歪まなくなる。

アッテネーターを購入

自作サブキックゲイン大きい問題 自作サブキックゲイン大きい問題

マイクとミキサーの間にアッテネーターを挟むとゲインを下げてくれます。サウンドハウスで800円で売っています。

CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / TXX20

で、どっちがいいのよ

友達のエンジニアさんが「LINE INに挿す方がナチュラルだよ」って教えてくれました。アッテネーターを買った後に。

おまけ:超簡単サブキック

おまけです。世界で一番簡単なサブキックのDIY。

生まれたままの姿のサブウーハー。
サブキック材料ウーハー

裏面にはこんな感じで線をつなぐところがあります。
自作サブキック材料ウーハー

ここと、マイクケーブルのメスの2番と3番を電線で繋ぎました。

自作サブキックウーハーそのまま

ウーハーの赤と黒、マイクケーブルの2番と3番、これも別にどっちに繋いでも音は拾えます。

逆相になるだけなので、挿し替えるかミキサーやインターフェイスの位相スイッチで解決。こまけえこたぁいいんだよ。
画像では電源ケーブルの電線を使っていますが、抵抗値とかあるらしいのでマイクケーブルの線を使った方がいいみたい。なるほどわからん。

完成。施工時間30秒。
自作サブキックウーハーそのまま
当然ですが自立します。

まぁまぁいい音してたので分解するかちょっと躊躇しました。
これ以上簡単にサブキックを手に入れるのは普通に商品買うしかない。

 

セッティング用のアダプターを作った(追記:2024/04/09)

作ったサブキックをフープクランプで直接バスドラにセッティングするアダプター的なものを作りました。

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